ぬりラボ
外壁・屋根

屋根塗装DIYのやり方と限界|安全基準と手順

更新: 2026-03-19 18:21:30吉田 健太

屋根塗装をDIYでやってみたい、でも本当に自分で手を出していいのか迷っている方へ。
この記事では、平屋で4寸勾配以下、足場があり、劣化が軽く雨漏りもないといった条件を満たす場合だけ検討すべき、という現場目線の線引きをはっきりお伝えします。

筆者の経験でも、同じ4寸でも朝露で濡れた屋根は乾いた日とは別物で、想像以上に足を持っていかれます。
だから筆者は乾くまで待つか、その日はやめます。
無理せず中止できる判断こそ、DIYで自分の身を守るいちばん現実的な策です。

街の外壁塗装やさんのスレート解説やヌリカエの下地処理の記事でも触れられている通り、屋根塗装は塗る前の洗浄・補修と乾燥が仕上がりを左右します。
スレート、金属、瓦でDIYの可否は変わりますし、やるなら下地処理から上塗り、スレートの縁切りまで理解したうえで進める必要があります。

費用だけ見ればDIYで浮くのは主に人件費ですが、時間と安全の負担は軽くありません。
この記事を読めば、どこまでが自分で対応できる範囲で、どの段階で業者へ切り替えるべきかまで判断できるようになります。

関連記事外壁塗装DIYの全手順|費用・道具・失敗しないコツ外壁塗装をDIYで進めるなら、まず見極めたいのは「自分でやっていい範囲」です。平屋で小面積で、劣化が軽い壁であれば現実的です。2階以上や広い面積、雨漏り、大きなひび割れがある場合は業者案件にして、安全面と仕上がりの確保を優先してください。

屋根塗装DIYはおすすめできる?まず結論と安全にできる範囲

屋根塗装DIYは、条件が揃わない限り筆者は基本的にすすめません。
理由は単純で、浮く費用の中心は人件費でも、その代わりに背負うのが高所作業の事故リスク、下地処理のやり直し、仕上がりのばらつき、そして数年後の耐久性の読みにくさだからです。
リフォームジャーナルが紹介している試算でも、DIYで節約できるのは主に約20万円の人件費ですが、その一方で作業量はプロ10人工に対してDIY20人工の想定で、土日進行だと2か月以上かかる計算になります。
安く済ませるつもりが、途中で体力も天候も尽きて中断し、結局は補修を業者に頼む。
この流れは現場でもよくある失敗です。

屋根材によっても前提は変わります。
スレートは新築から10年前後で塗装メンテナンスが目安になり、金属屋根はサビを止めるために塗装前のケレンやサビ処理が欠かせません。
反対に、粘土瓦や焼き瓦は基本的に塗装メンテナンスの対象ではなく、割れやズレの補修が中心です。
つまり「屋根だから全部DIY塗装で対応できる」という発想自体が危険で、屋根材と劣化状態を分けて考える必要があります。

DIY不可条件の具体例

筆者の線引きははっきりしています。2階以上、4寸を超える急勾配、雨漏り中、著しい劣化、足場未設置のどれか一つでも当てはまるならDIYは不可です。
ここは迷わず業者案件です。

雨漏りしている屋根は典型例です。
表面を塗っても、水の侵入経路が下地や板金、ルーフィング側にあるなら根本解決になりません。
スマートルーフの解説でも、劣化した化粧スレートは塗装では追いつかず、カバー工法や葺き替えが適切になるケースが示されています。
塗れば直ると思って着手すると、塗膜の下で劣化を進めるだけになりかねません。

著しい劣化もDIY不可です。
スレートの広範囲な割れや反り、金属屋根の面全体に及ぶ赤サビ、棟板金の浮き、下地の傷みが見える状態は、塗装の前に補修や交換の判断が入ります。
ここを読まずに塗ると、見た目だけ整っても寿命は戻りません。
プロの間では常識なんですが、屋根塗装は「何を塗るか」より前に「塗っていい状態か」を見極める仕事です。

足場なしも論外です。
屋根上だけでなく、昇降、材料運搬、洗浄、養生のすべてが危険になります。
外壁塗装の窓口が紹介する建設業の墜落・転落災害は死傷5,171件、死亡110件で、数字だけ見ても軽く扱える話ではありません。
しかもDIYでは、足場を組む技術そのものが別の専門領域です。
単管足場はJIS系の規格寸法に沿った鋼管や適合金具を使っても、壁つなぎや基礎処理まで含めて成立させなければ意味がありません。
自前で足場を何とかする発想は、塗装以前の段階で止めるべきです。

NOTE

筆者は4寸勾配でも、北面に苔が残っていて朝から湿っている日は中止にします。
微風なら進めても、風が強くなった時点で撤退です。
続ける判断より、やめる判断のほうが屋根では価値があります。

検討可能な条件セット

反対に、DIYを検討できるのは条件がきれいに揃ったケースだけです。
具体的には、平屋または低層、4寸勾配以下、足場と飛散防止メッシュあり、劣化が軽微、作業補助の立会人がいるという組み合わせです。
この条件から一つずつ外れるほど、DIYの現実味は急に薄れます。

平屋で勾配が緩く、屋根面が素直なら、作業姿勢を保てる余地があります。
そこに足場と飛散防止メッシュがあると、昇降と移動の危険が一段下がります。
さらに劣化が軽く、割れや反り、サビが局所にとどまるなら、塗装前の補修範囲も読みやすくなります。
立会人がいることも大きくて、材料受け渡し、体調変化の確認、緊急時の対応が一人作業とは別物になります。

ただし、この条件でも「塗るだけ」では済みません。
スレートなら高圧洗浄、十分な乾燥、補修、下塗り、上塗りに加えて、重なり部を塞がないための縁切りかタスペーサーが必要です。
リフォームジャーナルでは30坪住宅でタスペーサーを約1,000個使い、初めてだと約4時間かかる例が紹介されています。
金属屋根ならワイヤーブラシやディスクグラインダーでのケレン、サビ落とし、適切な下塗りが前提です。
ここが甘いと、数日できれいに見えても、剥がれや再発が早く出ます。

筆者の経験では、DIYで現実的なのは「全面塗装を完走すること」よりも、「条件のいい屋根で、下地の軽い補修を丁寧に進められること」です。
中長毛ローラーを転がす作業だけ切り取れば進みますが、屋根塗装はその前後の段取りで品質が決まります。
高圧洗浄後も最低24時間、条件によっては48時間の乾燥が必要になるので、土日の空き時間だけで短く終えるイメージは持たないほうが現実に近いです。

勾配・階数のリスク目安

勾配は数字で見るより、体で乗ると危険度がわかります。
一般的な住宅屋根に多い3〜6寸勾配は、坂の勾配換算で約30〜60%に相当します。
これだけでも十分に滑落の危険域です。
4寸を超えるあたりから、立っているだけで足裏の踏ん張りを使い続ける感覚になり、塗料缶や工具を持つと重心が前に逃げます。
筆者は4寸でも屋根面の状態が少し悪いだけで別案件として見ます。

わだち建築工房が示しているように、DIYでの上限目安は4寸勾配までという見方が現実的です。
6寸勾配では業者でも屋根足場が必要になることがあります。
ここまで来ると、塗装技術の話ではなく、まず安全に立てるかどうかの領域です。
2階以上になると、転落時の結果が一気に重くなるので、同じ4寸でも平屋とは別物です。
平屋の4寸と2階建ての4寸を同列に考えてはいけません。

2階以上、4寸超、あるいは雨漏りや広範囲劣化が絡むなら、塗る技術よりも落ちない仕組みと補修判断のほうが先に必要になります。
ここを外すと、節約した人件費より、事故とやり直しのコストのほうが重くつきます。

塗装できる屋根・できない屋根を見分ける

スレート:塗装前提と縁切り必須

化粧スレートやコロニアルは、屋根塗装の代表的な対象です。
新築から約10年がひとつの目安とされるのは、表面の塗膜が弱ると防水の役目が落ち、コケ・藻・色あせだけでなく、吸水による反りや割れにつながるからです。
街の外壁塗装やさんのスレート屋根を塗装する時の注意点でも、スレートは定期塗装が前提の屋根材として整理されています。

ただし、スレートは「塗れば終わり」ではありません。
重なり部を塗膜でふさいでしまうと、雨水の抜け道がなくなります。
そこで必要になるのが縁切りです。
縁切りは、塗装後にスレート同士の重なり部へ隙間を確保し、通気と排水を戻す工程を指します。
現在はタスペーサーを差し込む方法が主流で、従来の縁切りヘラより作業の再現性を取りやすい場面が多いです。
ここを省くと、見た目が整っても内部で水を抱え込み、かえって傷みを進めます。

一方で、古いスレートなら全部が塗装向きとは限りません。
特に劣化が進んだノンアスベスト期の製品は、表面だけ整えても基材の脆さが残ることがあります。
歩くだけで欠ける、端部がボロボロ崩れる、反りが広い範囲で出ている。
この状態は塗装の守備範囲を越えています。
現場でも、洗浄や下塗りの前段階で屋根材の傷みが想定より深く見えて、塗装よりカバー工法を優先した方が筋が通ると感じる場面があります。

金属:サビ処理と防錆下塗り

トタンやガルバリウム鋼板などの金属屋根も、塗装メンテナンスの対象です。
ここでの目的は美観回復だけではなく、サビの進行を止めることにあります。
色あせだけなら軽症に見えても、固定部まわりや水がたまりやすい箇所では腐食が先に進んでいることがあります。
金属屋根は表面に塗膜が残っているうちに手を入れる方が、補修範囲を小さく抑えやすいんです。

工程の肝はケレンです。
ケレンは、旧塗膜の浮き、粉化した塗膜、サビを削り落として密着の土台を作る下地処理を指します。
筆者の経験では、浮きサビは見た目より深く入っていることが多く、ワイヤーブラシやサンダーを当てると下から脆い層が続いて出てきます。
表面だけ赤茶色を払って終えると、上から防錆塗料を重ねても持ちません。
素地金属が見えるところまで落とし、そのうえで防錆下塗りを入れる流れが前提です。
ヌリカエの『塗装の下地処理は何をする?』でも、塗装前の下地処理が密着と耐久を左右すると説明されています。

金属屋根では、下塗り材の選定も外せません。
スレートで使うシーラーとは役割が違い、金属にはプライマーやサビ止め塗料を使って密着と防錆を両立させます。
旧塗膜の浮きが多い、釘頭やビス頭まわりに腐食がある、板金の継ぎ目にわずかな開きがある。
こうした症状が混ざる屋根ほど、上塗りより先に下地処理の精度で結果が決まります。

塗装の下地処理は何をする?箇所ごとの工程を紹介 | ヌリカエnuri-kae.jp

粘土瓦:塗装不要の理由

いぶし瓦や陶器瓦などの粘土瓦は、原則として塗装不要です。
表面そのものが焼き物として仕上がっているため、スレートのように塗膜で防水を維持する考え方ではありません。
色が褪せたように見えても、素材の性質として塗り替え前提ではないんです。
ここをスレートと同じ感覚で扱うと、必要のない工事を選んでしまいます。

粘土瓦で見るべきなのは、塗膜の劣化ではなく割れ、ズレ、欠け、漆喰や棟まわりの傷みです。
つまりメンテナンスの中心は補修や差し替えで、塗装ではありません。
実際、粘土瓦に塗料をのせても密着の前提が弱く、耐久面の利点が乏しいうえ、剥がれ方が目立ちやすくなります。
表面だけ艶が出ても、瓦本来の長所を活かしているとは言いにくいです。

見分け方としては、瓦1枚ごとの厚みがあり、焼き物らしい質感があるものは粘土瓦の可能性が高いです。
和瓦や洋瓦でも、粘土瓦なら「塗らないで補修」が基本方針になります。
屋根材ごとの判断で迷うときも、粘土瓦だけは塗装対象からいったん外して考えると整理しやすくなります。

セメント瓦/モニエル瓦:要注意点

セメント瓦やモニエル瓦は、粘土瓦と見た目が似ていても扱いが別です。
これらは塗膜で保護しながら維持する屋根材なので、劣化状況によっては塗装が必要になります。
ここが屋根材判定でいちばん混同されやすいところです。
瓦の形をしているから塗装不要、とは言えません。

特にモニエル瓦は、表面にあるスラリー層の処理が難所です。
この層が残ったままだと下塗りが安定せず、上塗りごと剥がれる原因になります。
高圧洗浄だけで足りると考えると危険で、専用下塗りや入念な下地調整が必要です。
セメント瓦も同様に、劣化粉が多い面では吸い込みと密着不良の両方が起きやすく、普通の屋根塗装より一段階難しくなります。

見た目では判断がつきにくいのも厄介です。
瓦調だから安心と考えて進めると、下塗りの選定ミスで全面不具合になりかねません。
現場でも、この種類は「塗れるか」より「正しい下地処理まで含めて成立するか」を先に見ます。
劣化が進んでいる場合はDIYより業者向きの屋根材として考えた方が整合が取れます。

塗装で解決しない症状

屋根塗装は表面保護のメンテナンスであって、構造不良の修理ではありません。雨漏り中の屋根は、塗装では解決しません。 水の侵入口が板金、下葺き材、貫板、谷部、取り合い部にあるなら、表面の色を塗り替えても原因は残ります。
スマートルーフの『化粧スレート屋根の塗装のデメリット』でも、劣化状況によっては塗装の限界があると触れられています。

同じく、下地の腐朽、広範囲の反りや割れ、棟板金の浮きも塗装の担当外です。
棟板金が浮いているなら固定の補修や下地交換が先ですし、スレートが何枚も割れているなら差し替えやカバー工法の検討が先に来ます。
金属屋根でも、サビが板厚を削って穴あき寸前なら、塗装より板金補修や葺き替えの話になります。

TIP

色あせ、軽いコケ、初期のサビは塗装の範囲です。
雨漏り、下地の傷み、部材の浮きや変形は補修や改修の範囲です。
ここを混ぜて考えると、塗っても直らない屋根に手を入れることになります。

塗装で直る症状と、塗装では届かない症状を切り分けると、屋根材ごとの判断もぶれにくくなります。
見た目が気になる屋根ほど、表面の色より先に、屋根材そのものと下地が生きているかを見ていくことになります。

smartroof.jp

屋根塗装DIYに必要な道具と安全装備

安全装備と足場

身につける装備では、ヘルメット、滑りにくい靴、墜落制止用器具が基本です。
墜落制止用器具については、最新の安全基準に基づき原則としてフルハーネス型(フルハーネス型墜落制止用器具)を前提に考えてください。
胴ベルト型安全帯は短時間の限定的作業など特定条件でのみ許容される場合があり、用途や規制で使用に制限がある製品もあります。
胴ベルトを「十分」と過信しないでください。
使用可否や具体的な取り扱いは、必ず製品の仕様書・メーカー指示および労働安全関係の規定で確認し、フックの掛け先やアンカーの強度、取り付け方法、点検・装着方法まで理解したうえで屋根に上がってください。
可能なら装着方法の指導を受けることを推奨します。

TIP

屋根の上で安心して腕を動かせる状態は、塗装技術ではなく足場と装備で作ります。
ここが抜けると、うまく塗る以前に「立っていられない」が先に来ます。
仕上がりを左右するのは、塗る道具よりも下地処理の道具です。
必要になるのは高圧洗浄機、デッキブラシ、ケレン道具の3系統です。
高圧洗浄ではコケ、藻、粉化した旧塗膜、汚れを落とし、洗い切れない部分や泥だまりはデッキブラシで追い込みます。
洗浄後は最低24時間、条件によっては48時間の乾燥が必要とされます。
『塗装工事で最も大切な下地処理』でも、洗浄後に十分乾かしてから次工程へ進める流れが示されています。

ケレン道具は、屋根材によって使い分けます。
金属屋根のサビ落としや旧塗膜除去ではワイヤーブラシが基本で、頑固な浮きや厚い旧塗膜には皮スキを当てます。
もっと広い面や固着した塗膜にはサンダーやディスクグラインダーを使う場面もあります。
家庭用クラスでも、塗膜除去は出力の大きさだけで決まるわけではありません。
筆者の感覚でも、塗膜剥がしは本体の馬力より、ワイヤーカップにするのか不織布ディスクにするのかで作業の進み方が変わります。
広い面を均しながら落とすなら不織布、局所的な赤サビにはワイヤーという使い分けが実務でははっきりしています。

金属部には、サビを落とした後の補助材も要ります。
進行が浅い部分にはサビ転換剤、素地調整後の下塗りには防錆プライマーを入れる流れです。
サビを削って終わりではなく、削った面を次の腐食から守るところまでが下地処理です。
棟板金まわりの浮きや緩みがあるなら、棟板金ビスで固定を見直し、必要に応じて塗装可能な変成シリコーン系のコーキング材で補修を入れます。
シリコーン系は上から塗れないものが多いので、塗装工程とつながる補修では変成シリコン系を選ぶ、というのが現場の基本です。

jpaintm.com

塗装用具と養生材

塗装に使う道具は、刷毛、ローラー、ローラーバケット、延長ポール、下塗り材、中塗り・上塗り材、養生材まで含めて一式で考えます。
どれかひとつ欠けると、その場しのぎの動きが増えて事故と塗りムラの両方につながります。

ローラーは屋根用の中長毛タイプが中心です。
中長毛は毛丈おおむね15〜20mmの製品が多く、スレートや細かな凹凸面にも塗料を入れ込みやすい部類です。
幅180mm前後の中長毛ローラーなら、安定した姿勢で転がせる条件ではおよそ毎分0.7〜1.2㎡程度の進み方になります。
筆者のおすすめは、屋根面ローラーに延長ポールを併用することです。
無理に前傾で腕だけ伸ばすと、足元がふらつき、ローラー圧も乱れます。
延長ポールを入れると体の重心を残したまま届くので、足元が安定し、結果として塗りムラも減ります。

細部は刷毛が担当します。
棟板金の際、雪止め金具まわり、重なりの奥、ローラーが入り切らない端部は刷毛がないと始まりません。
塗料を受けるローラーバケットも、缶から直接すくうやり方より作業のテンポが整います。
屋根上では持ち替えが増えるだけで危険が増すので、片手で扱える容器の存在は思った以上に効きます。

下塗り材は下地に合わせて選びます。
スレートならシーラーで吸い込み止めと密着確保、金属ならプライマーで密着と防錆、傷みが出た面の調整にはフィラーという考え方です。
上に重ねるのは中塗り材・上塗り材で、同じ塗料を重ねる仕様が多いものの、乾燥時間、希釈率、塗布量は製品ごとに決まっています。
ここは感覚で合わせる工程ではなく、メーカー仕様書に沿って組み立てる工程です。

養生材も忘れられません。養生シート、マスカー、マスキングテープがあれば、雨樋、外壁、サッシ、植栽への飛散を抑えられます。
加えて、細かいカットや現場合わせではマスキング用はさみがあると手元の動きが止まりません。
養生が雑だと、塗る前から後片付けの手間が増えます。

スレート向けタスペーサー

スレート屋根では、塗料やローラーと同じくらいタスペーサーが欠かせません。
役目は、塗装後にスレート同士の重なり部が塗膜で密着してしまうのを防ぎ、排水の通り道を確保することです。
いわゆる縁切りを安定して行うための部材で、従来のヘラによる縁切りより再現性があります。

数量の目安としては、30坪の住宅で約1,000個、初めての作業で約4時間がひとつの基準になります。
数字だけ見ると軽い副資材に見えますが、実際にはスレート塗装の成否を左右する部品です。
ここを省くと、見た目は塗れても内部で排水不良を招きます。
筆者も、スレートは塗る工程よりタスペーサーの挿入のほうが神経を使う場面が多いと感じます。
1枚ずつ重なりの状態が微妙に違うので、ただ差し込めば終わりではありません。

古い工法では縁切りヘラで乾燥後に塗膜を切る方法もあります。
工具自体はMonotaROやAmazonの工具カテゴリで1,000〜5,000円程度の製品が見つかりますが、DIYでは手間が大きく、塗膜を傷めるリスクも伴います。
スレートを塗るなら、タスペーサー前提で段取りしたほうが工程全体に無理が出ません。

天候・計測ツール

塗装日は晴れていれば十分、という見方では足りません。
屋根は地上より条件変化が早く、乾いて見えても表面温度や湿度で塗れる状態かどうかが変わります。
そこで役立つのが赤外線温湿度計風速計です。

赤外線温湿度計は、表面温度と周囲湿度をその場で見られるので、朝露が残っていないか、日射で屋根面が上がりすぎていないかを判断する助けになります。
機種の幅は広く、簡易型は3,000円台から、上位機は数万円台まであります。
風速計も携帯型なら2,000〜20,000円程度の範囲であり、瞬間風だけでなく平均風を見られるタイプだと、飛散と足元の不安定さを読む材料になります。
作業中止の風速には統一値がないぶん、現場では「数値を持って判断する」ことに意味があります。

補助道具としては、補修用のコーキング材、緩み直し用の棟板金ビスも手元にあると流れが止まりません。
塗装に入ってから棟の浮きや小さな隙間を見つけることは珍しくなく、そのたびに降りて買い足すと工程が途切れます。
道具不足による中断は、乾燥待ちの計画まで崩します。
費用感は道具の選び方や規模で幅がありますが、屋根塗装DIYでは「塗る物」だけでなく「安全に止める、測る、補修する物」まで含めて準備しているかで、作業の質が変わります。

下地処理の手順と省略してはいけない理由

高圧洗浄と乾燥待ち

下地処理の始点は高圧洗浄です。
ここで落とすのは表面の土ぼこりだけではありません。コケ、藻、汚れ、チョーキング粉、弱った旧塗膜まで取り去って、塗料が密着できる面をつくります。
ぬりかえの下地処理解説やJPMの下地処理コラムでも、高圧洗浄後の乾燥が塗装品質を左右すると整理されています。
現場でもまったく同じで、洗ってきれいになった時点ではまだ半分で、そこからしっかり乾かして初めて塗装工程に進めます。

洗浄後の乾燥は最低24時間、条件によっては48時間みておくのが基本です。
ここを詰めると、見た目は塗れても中で問題が起きます。
乾燥不足のまま塗ると、密着不良、白化、膨れが出やすく、あとから剥がれとして表面化します。
筆者の経験では、雨上がりの翌朝は表面だけ乾いて見えても、スレートの重なり目や板金まわりに水が残っていることが珍しくありません。
そういう日は午後まで待ったほうが結果が安定しますし、状態が悪ければ日を改めたほうが、後からの剥がれトラブルを減らせます。

スレート屋根では、北面のように苔が根まで入りやすい面で差が出ます。
洗浄機だけで表面の緑色が落ちても、根が残ると再発が早いので、筆者は苔の強い面ではデッキブラシを併用して重なり部までかき出します。
ここが甘いと、塗装後に局所的なふくれや色ムラが出ることがあります。
さらに、洗浄後にスレートが水をよく吸う状態なら、下塗りで使うシーラーの選び方まで変わってきます。
下地を見ずに材料だけ決めると、吸い込み負けして塗膜が痩せ、艶も揃いません。

ケレン・サビ処理

金属屋根や棟板金では、洗浄だけでは下地処理になりません。
必要なのがケレンです。
サンドペーパー、ワイヤーブラシ、ディスクグラインダーなどで、サビ、浮いた旧塗膜、脆くなった塗膜を落として、塗料が食いつく面をつくります。
表面にサビが浮いたまま塗ると、上から色をかぶせただけの状態になり、短い期間で剥離につながります。
これは現場で何度も見てきたパターンです。

ケレンは、ただ赤サビを消して見た目を整える作業ではありません。
浮いている旧塗膜を削り、エッジをならし、段差を減らしておくことで、上塗り後のムラ、艶引け、ピンホールまで抑えられます。
特に金属屋根は、旧塗膜が端からめくれていることが多く、そのまま塗ると新しい塗膜ごと持ち上がります。
削ってみると広い範囲で密着が切れていることもあり、見えている傷みより一段深いところまで疑うのが職人の感覚です。

サビを落とした後は、素地の保護までつなげます。
軽いサビなら防錆プライマー、進行した部分では状態に応じてサビ転換系の下塗り材を使い、金属を守りながら上塗りとの密着も確保します。
金属下地にシーラー感覚で材料を当てると、密着も防錆も中途半端になります。
金属は金属向けの手順を踏む、というのが基本です。

補修

洗浄とケレンで素地が見えてくると、次に必要なのが補修です。
屋根塗装は、塗る前に壊れている場所を直しておかないと意味がありません。
スレートなら割れ、欠け、反りを見て、軽微なものはコーキングで処置し、状態によっては差し替えまで考えます。
ひびに塗料を流し込んでも補修にはならず、動く下地の上に薄い膜を乗せただけで終わります。

板金部も見逃せません。棟板金の釘浮きは屋根でよく出る不具合のひとつで、抜けかけた釘をそのままにして塗装しても、後でまた浮いて塗膜ごと割れます。
こういう場所は、釘を打ち戻すだけで終わらせず、ビスで打ち直してシールまで入れるほうが再発を抑えやすいです。
塗装工程の途中で棟が動けば、仕上がり以前に防水の筋が崩れます。

補修不足は、塗装後の見た目にもはっきり出ます。
欠けや段差を放置した面は塗料の溜まり方が不均一になり、光の当たり方でムラが見えますし、ひびの周辺では乾燥後に筋が残ります。
下地処理が施工品質の大半を決めると言われるのは、このあたりに理由があります。
上塗りは仕上げですが、仕上がりを決めているのはその前段です。

TIP

筆者は補修を「塗るための準備」ではなく「塗っても壊れない状態に戻す工程」と考えています。ここを飛ばすと、塗膜がきれいでも下地が先に負けます。

下塗り材の選び方

下地処理の締めになるのが下塗り材の選定です。
下塗りは色をつけるためではなく、吸い込みを止める、密着を上げる、下地を整えるために入れます。
ここで下地に合わない材料を選ぶと、中塗りと上塗りを丁寧に重ねても性能が乗りません。

役割で分けると、シーラーは吸い込み止めと密着確保、プライマーは密着向上と金属下地への対応、フィラーは凹凸充填と下地調整です。
スレートで吸水が進んだ面にシーラーが足りないと、上塗りの樹脂分が下地に取られて艶がばらつきます。
金属でプライマーを省くと、表面に塗膜が乗っているだけの弱い状態になります。
劣化した面にフィラーなしで進めると、細かな凹凸がそのまま仕上がりに出ます。

この工程を省くと起きる不具合ははっきりしています。
代表的なのは早期の剥がれ、艶ムラ、ピンホール、塗膜の早期劣化です。
どれも上塗りの腕前だけでは解決できません。
筆者が現場で見てきた限り、塗装トラブルの多くは「塗り方」より前に、「下地処理が足りなかった」「下塗り材の選定がずれていた」に行き着きます。
見た目を整える工程と思われがちですが、実際には屋根塗装の寿命を決める土台です。

関連記事防水塗料の選び方|ベランダ・屋上の種類とDIY可否ベランダや屋上の「防水塗料」を選ぶときは、まず今ある防水層がFRPウレタンシートコンクリートのどれか、そして傷みが表面だけなのか防水層本体まで進んでいるのかを見極めることが先です。

屋根塗装DIYの基本手順

標準の9ステップ

屋根塗装DIYは、工程を飛ばさず同じ順序で進めることが仕上がりの安定につながります。
筆者は現場でもDIY向けの説明でも、まずこの9ステップに固定して話します。
順番がぶれると、乾燥不足や補修忘れがそのまま不具合に直結するからです。

  1. 点検

    塗る前に、屋根材の割れ、欠け、反り、サビ、板金の浮き、棟まわりの緩みを見ます。
    ここで「塗装で隠せる傷み」と「塗装前に直すべき傷み」を分けます。
    スレートなら重なり部の詰まりや割れ、金属ならサビの進み方と旧塗膜の浮き方まで見ておくと、後の工程がぶれません。
    外壁塗装の窓口の「『屋根塗装のDIYは可能?』」でも、屋根DIYは安全条件だけでなく劣化状況の見極めが前提とされていますが、実際に失敗の多くはこの時点の見立て不足から始まります。

  2. 洗浄

    コケ、藻、砂ぼこり、脆い旧塗膜を落とします。
    見た目がきれいになれば終わりではなく、塗料の密着を邪魔するものを取り除く工程です。
    北面や日陰面は表面だけ落としても根が残ることがあり、筆者はそういう面では重なり部まで意識して洗います。

  3. 乾燥

    洗浄後は水が抜けるまで待ちます。
    高圧洗浄後の乾燥は最低24時間、条件によっては48時間見たほうがよいとされます。
    表面が乾いて見えても、重なり目や板金の取り合いに水が残っていると、下塗りの密着が落ちます。
    ここを急いで得することはありません。

  4. 補修

    点検で見つけた不具合をここで直します。
    スレートの割れや欠け、棟板金の釘浮き、軽い隙間、端部の傷みを補修して、塗っても壊れない状態に戻します。
    塗料は補修材ではないので、補修を飛ばして先に色をのせても長持ちしません。

  5. 下塗り

    下地に合わせた下塗り材を入れます。
    スレートなら吸い込み止めと密着確保、金属なら防錆を含めた密着確保が目的です。
    ここで膜を安定させておかないと、中塗りと上塗りの艶や色が揃いません。

  6. 中塗り

    仕上げ塗料の1回目です。
    下塗りで整えた面に規定の膜厚をつくるイメージで、塗り継ぎや塗料だまりを抑えながら進めます。
    筆者は面を細かく区切って、退路を残す方向に塗り進めます。
    行き当たりばったりで広げると、踏み場と未塗装部が混ざって一気に崩れます。

  7. 上塗り

    中塗りの上に同じく仕上げ塗料を重ね、色、艶、保護膜を整えます。
    上塗りは見た目の工程と思われがちですが、実際には中塗りで足りなかった膜を仕上げる工程でもあります。
    ローラーだけで追い切れない端部や板金まわりは刷毛も使って塗膜をつなげます。

  8. 乾燥

    塗り終えたら、触って乾いたように見えてもすぐに次の作業へ移らず、塗膜が落ち着く時間を取ります。
    特に重なり部、板金の折り返し、棟の際は乾き方に差が出ます。
    乾燥不足のまま手直しを入れると、艶ムラや引っかき傷が残ります。

  9. 仕上げ確認

    ここでは見た目だけでなく、機能面も見ます。
    塗り残し、塗料だまり、端部の透け、重なり目の閉塞、タッチアップの必要箇所、養生の剥がし忘れ、ゴミの回収まで含めて確認します。
    DIYでは塗り終えた瞬間に気が抜けがちですが、仕上げ確認まで終わって1工程です。

gaiheki-tosou.shop

スレート特有:縁切り/タスペーサー

スレート屋根で外せないのが、重なり部の通気と排水を確保する処理です。
塗装で重なり目が塞がると、内部に入った水の逃げ道がなくなり、雨漏りや凍害の原因になります。
ここはプロの間では常識なんですが、DIYでは見落とされやすい部分です。

現代の段取りとしては、縁切りヘラで後から切るより、タスペーサーを使って重なり部の隙間を確保する流れのほうが安定します。
作業タイミングは塗装中または塗装後で、重なり目を塞がないことが目的です。
筆者は面ごとに区切ってタスペーサーを先に入れ、そこから中塗り、上塗りへ進む順に組みます。
こうしておくと、どの面でどこまで挿入したかが追いやすく、塗り重ねで閉塞させる失敗も減ります。

30坪規模で約1,000個が目安になるので、数字だけ見ると小さな部材でも作業量は軽くありません。
実際にやると、指先で一つずつ入れる単純作業が続くので、後半は手が鈍ります。
序盤から飛ばすより、面ごとに区切って一定のペースで進めたほうが仕上がりも体力配分も安定します。
初めてだと時間もかかるので、「挿入」と「塗装」を混線させない段取りが効きます。

古い工法のように乾燥後にヘラで縁切りする方法もありますが、塗膜を傷つけたり、切り残しと切り過ぎが混在したりで、DIYでは精度が乱れやすいです。
スレートを塗るなら、縁切りはおまけの工程ではなく、排水経路を守る本体工程として扱うほうが再現しやすくなります。

金属屋根のポイントと端部処理

金属屋根は、スレートとは難所が違います。
中心になるのはサビ処理と防錆下塗りです。
ケレンでサビと浮いた塗膜を落としたあと、サビ止め下塗りを入れてから中塗り、上塗りへ進めます。
ここを省くと、表面だけきれいでも下からサビが再発して塗膜を押し上げます。

もうひとつ差が出るのが、端部、棟板金、釘頭の先行塗りです。
広い面をローラーで塗り始める前に、折り返し部分、継ぎ目、板金の小口、釘頭やビス頭を刷毛で先に拾っておくと、膜が切れません。
金属は平滑に見えても、実際にはエッジで塗膜が薄くなりやすく、そこから先に傷みます。
筆者は面を転がす前に、板金まわりだけ先に一周取ります。
こうしておくとローラー作業中に端部へ戻る回数が減り、踏み替えも少なくなります。

棟板金まわりは、塗る対象であると同時に動きが出やすい場所でもあります。
釘頭の浮きやシール切れが残ったまま塗ると、あとで動いて塗膜が割れます。
金属屋根では「色をのせる」より先に、「サビを止める」「水が入る筋を潰さない」「端部の膜厚を確保する」という順で考えると、工程の判断がぶれません。

TIP

金属屋根の端部は、広い面より先に傷みます。ローラーで面を整えてから細部を触るより、刷毛で端を先行してから面を追ったほうが、膜のつながりがきれいに残ります。

天候・塗り重ね間隔

屋根塗装は、同じ材料でも天候で進め方が変わります。
乾燥時間と塗り重ね間隔は、経験則で決めず、塗料メーカーの仕様書に書かれた条件を基準に組むのが前提です。
気温、湿度、下地の状態で必要時間が変わるので、朝の時点でその日の作業範囲まで決めておくと無理が出ません。

筆者が現場で特に見るのは、前日の雨、当日の風、午後の天気の崩れ方です。
朝は問題なく見えても、風が立つと飛散だけでなくローラー跡の乾き方まで乱れますし、曇って湿気が残る日は重なり部の乾きが鈍ります。
JPMの「『塗装工事で最も大切な下地処理』」でも乾燥不足が不具合の原因として触れられていますが、屋根ではその影響が面で出るぶん、外壁以上に結果がはっきり出ます。

塗り重ねの間隔を詰めすぎると、下の塗膜が動いて艶ムラやちぢみの原因になります。
逆に空けすぎると、面ごとの色差や汚れの付着が出ます。
そこで筆者は、1面ごとに下塗りから中塗りまで、中塗りから上塗りまでの待ち時間を記録しながら進めます。
感覚で進めるより、面単位で時間を揃えたほうが再現性が高くなります。

仕上げ確認の段階では、塗り残しや塗料だまりだけでなく、重なり目が塞がっていないか、タスペーサーまわりが埋まっていないか、端部の膜が切れていないかまで見ます。
必要ならその場でタッチアップし、養生材やゴミを回収して面を空けます。
ここまで詰めておくと、「塗ったのに後で気になる場所が出る」というDIY特有の取りこぼしが減ります。

失敗しやすいポイントと対策

濡れ・風・気温湿度

気温や湿度は塗膜形成と乾燥に大きく影響します。
一般論として低温・高湿の環境では乾燥が遅れ、密着不良や白化、膨れといった施工不良のリスクが高まるため避けるのが安全です。
ただし、具体的な「何℃以下/何%以上」で作業不可となるかは塗料や仕様ごとに異なります。
各工程での塗装可否や塗り重ね間隔は必ず使用する塗料のメーカー施工マニュアルに従ってください。
数値を示す場合は、その塗料の仕様書を参照する旨も明記しましょう。
風も同じです。
風の強い日は、飛散、ローラー跡の乱れ、体勢の崩れが一度に起こります。
特に屋根は地上より風を強く受けるので、庭先では静かでも屋根上では塗れないことがあります。
前のセクションで触れた通り、風速計で数字を持って判断したほうが迷いません。
統一の中止基準はありませんが、現場ごとに「この数値を超えたら止める」を決めておくと、気分で進める失敗を防げます。

TIP

朝は静かでも、昼前から風が立つ日は珍しくありません。屋根では一工程先まで進めるより、乾燥と天候に合わせて止めるほうが、塗膜の安定も足元の安全も崩れません。

縁切り不足の見分け方

スレート屋根のDIYで、見た目はきれいなのに後から問題化しやすいのが縁切り不足です。
重なり部が塗膜で塞がると、内部に入った水の逃げ道がなくなり、雨漏りや凍害につながります。
外壁塗装の窓口の屋根塗装のDIYは可能?や街の屋根やさんのスレート屋根を塗装する時の注意点でも、スレートはこの排水経路の確保が要点として扱われています。
屋根塗装では「塗れたか」だけでなく、「塞いでいないか」を見る必要があります。

見分け方は単純で、スレートの重なり目に連続した塗膜が橋のようにかかっていないかを見ます。
タスペーサーを入れたはずなのに、上塗りで周囲まで塗料を溜めてしまうと、実質的に閉じた状態になります。
下から見上げるだけでは分かりにくいので、面を変えながら重なり部の影が残っているかを追うと判断しやすくなります。
影が均一に潰れている場所は、塗膜でつながっていることが多いです。

DIYでは、タスペーサーを入れた時点で安心して、その後の中塗り・上塗りで埋め戻してしまう失敗がよくあります。
30坪規模で約1,000個という数になるので、挿入した達成感が先に立つのですが、本当に見るべきなのは仕上げ後の隙間です。
筆者は仕上がり確認で、色ムラより先に重なり部を追います。
スレートの重なりが均一に呼吸しているかを見る感覚です。
ここが詰まっていると、見た目の艶が整っていても施工としては危うい部類に入ります。

補正方法としては、タスペーサー併用が前提で、塞がった箇所だけを適切に開かせる考え方になります。
従来の縁切りヘラを使う方法もありますが、力任せに入れると塗膜を裂いたり、割れかけたスレートに負担をかけたりします。
ヘラは「何でも後から直せる道具」ではありません。
切り残しと切り過ぎが混在すると、排水経路の確保という本来の目的から外れます。
重なり目をきれいに見せることより、水が抜ける状態を残すことが先です。

塗料・下塗りの適合確認

塗料選びの失敗は、塗った直後では目立ちません。
問題が出るのは少し経ってからで、剥がれ、膨れ、密着不良として返ってきます。
典型例は、屋根用でない塗料を流用することと、下地に合わない下塗りを合わせてしまうことです。
屋根は外壁より熱、紫外線、水の影響を受けるので、「余っている塗料を使う」は通用しません。

下塗りも同じで、スレートなら吸い込み止めと密着向上を狙うシーラー系、金属ならサビ処理後に密着と防錆を担うプライマー系、劣化が進んだ下地ならフィラー系の考え方が必要になります。
ここを混同すると、上塗り材がどれだけ良くても土台が負けます。
筆者が現場でよく見たのは、金属屋根に外壁感覚でシーラーを当ててしまうケースと、脆くなったスレートに吸い込みを止めきれない下塗りを一回で終えてしまうケースです。
前者は密着不良、後者はムラと早期劣化につながります。

適合確認では、塗料そのものだけでなく、下塗り・中塗り・上塗りを同じメーカー体系で組む発想がぶれにくいです。
メーカーの適合表どおりに組まれた仕様は、少なくとも「混ぜたせいで不具合が出た」という失敗を避けられます。
DIYで怖いのは、塗料名だけ見て選び、下塗りとの相性を飛ばすことです。
屋根材、既存塗膜、補修材まで含めてつながっているので、単品での性能比較だけでは判断を誤ります。

乾燥不足も塗料選定ミスと一体で起こります。
たとえば下塗りがまだ落ち着いていないのに中塗りを重ねると、相性が合っていても層として不安定になります。
白っぽく曇る、艶が引ける、あとから端部から剥がれるといった症状は、この段階の詰めすぎで起きます。
塗料を選ぶ段階では、耐候年数の印象より、屋根材への適合と指定工程の整合のほうを先に見るべきです。

雨漏り・劣化大のケース

雨漏りしている屋根に塗装をかけても、根本解決にはなりません。
塗膜は防水紙や板金の不具合を直すものではないからです。
むしろ表面だけ色が整うぶん、問題の発見を遅らせることがあります。
雨染みがある、天井裏で湿りが出る、棟や谷まわりに明確な不具合がある屋根は、先に原因特定と補修の領域です。
塗装は補修後に状態を整える工程であって、雨漏り修理の代用品ではありません。

劣化が進んだスレートにも無理な再塗装は向きません。
表面の塗膜が切れているだけなら塗り替えで戻せますが、吸水が進み、反り、ひび、欠け、脆弱化が目立つ段階では、塗料をのせても下地が持ちません。
歩くだけで欠けが進むような屋根は、塗装で延命する発想自体が危うくなります。
スマートルーフの化粧スレート屋根の塗装のデメリットでも、再塗装の限界を超えたスレートはカバー工法や葺き替えの判断が必要だと整理されています。

この段階の屋根は「塗れるかどうか」ではなく「塗っていい状態かどうか」で見ます。
旧塗膜を落とす前から素地が粉っぽく崩れ、爪先で縁が欠けるようなら、塗装は表層の化粧にしません。
下塗りを多めに入れても、吸い込みが止まらず、膜厚を付けても安定しない場面があります。
そういう屋根は塗装工程の丁寧さでは救いきれません。

屋根材ごとの前提も押さえておきたいところです。
スレートと金属は定期塗装の意味がありますが、粘土瓦は原則として塗装対象ではありません。
瓦の割れやズレは補修が中心で、塗ること自体が答えにならないケースです。
失敗しやすいのは、屋根は全部「色を塗れば保つ」と考えてしまうことです。
雨漏り屋根への塗装、劣化スレートへの無理な再塗装、この2つは現場で見ても結果が苦しいパターンです。
ここを見誤ると、手間も材料も使ったのに、必要だったのは別の工事だったという結論になります。

DIYと業者依頼の費用・時間・安全性の違い

費用比較の目安

屋根塗装は「塗料さえ買えば済む作業」ではありません。
前述の通り足場は必須で、住宅規模のくさび緊結式足場の30日レンタル費用は事例として約30,000〜50,000円の範囲で示されることがありますが、地域、業者、規模、設置条件で大きく変動します。
必ず現地見積もりを取り、複数社で比較してください。

比較すると、費用の見え方は次のようになります。

項目DIY業者依頼一部DIY+専門依頼
初期費用人件費を抑えやすいが、足場・安全具・工具・消耗品が乗る高いが必要機材と人件費を含めて一括中間。危険工程だけ外注して材料費は抑えやすい
安全性低い。高所作業と足場管理を自分で背負う高い。足場・工程管理込みで進めやすい中間。危険度の高い部分を切り分けられる
仕上がり低〜中。下地処理と塗り継ぎで差が出やすい高い。工程の整合が取りやすい中。見える面はDIY、土台は専門施工に寄せられる
時間大きい。休日施工だと長引きやすい小さい。連続施工で進む中。分担次第で短縮しやすい
向くケース平屋、緩勾配、劣化が軽い屋根2階以上、急勾配、劣化大の屋根足場や下地だけ任せたいケース

時間比較と工程の止まりどころ

時間差は、費用差以上に現実的です。
リフォームジャーナルで示される目安では、プロの作業量が約10人工、DIYの試算が約20人工です。
時間に直すと、プロが80時間、DIYが160時間の計算になります。
土日だけで動くなら、2か月以上かかっても不思議ではありません。
しかもこの160時間は、毎回きちんと作業に入れた場合の話です。
天候、朝露、風、乾燥待ちが入ると、実際の暦日数はさらに伸びます。

筆者の肌感では、屋根は「塗る時間」より「準備と待ち時間」のほうが長くなります。
高圧洗浄のあとに最低24時間、条件によっては48時間の乾燥待ちが入り、ここで工程が止まります。
下地補修にシーリング材を使えば、その硬化待ちも出ます。
スレートならタスペーサーの挿入だけでも、30坪住宅で約1,000個、初めてなら約4時間かかる目安があります。
ローラーを動かしている時間だけを想像すると、DIYはだいたい見積もりを誤ります。
乾燥待ちをきちんと守ると、実働は想像の半分以下という感覚になるはずです。

Angiでは屋根塗装の所要日数を2〜5日以上としていますが、これは連続稼働できる前提での話です。
DIYでは、朝に養生を戻し、道具を上げ、塗って、片づけて終える流れになるので、1日の“塗れる時間”は短くなります。
現場では、作業がどれだけ進むかより、どこで止めざるを得ないかを読めるかで負担が変わります。

{{product:3}}

安全性と事故リスク

安全面は、費用や時間より優先順位が上です。
建設業では墜落・転落による死傷災害が5,171件、死亡事故が110件という数字が出ています。
屋根塗装DIYの可否を解説した外壁塗装の窓口の記事でも、この種の事故の重さが整理されています。
屋根の上では、塗装技術より先に「落ちない仕組み」が必要です。
ここを自力で成立させるのは簡単ではありません。

足場なしでの作業は、現実的な選択肢に入りません。
筆者は現場で何度も見てきましたが、屋根上では一歩の位置がずれただけで姿勢が崩れます。
塗料缶、ローラー、延長ポールを持った状態では、手すりのない高所で体勢を立て直す余裕がありません。
わだち建築工房の屋根塗装はDIYでもできる?でも、DIYの目安は4寸勾配まで、一般的な住宅は4〜5寸が多いと整理されています。
つまり、よくある戸建てでも「ギリギリDIY向きではない」屋根が普通に混ざります。

TIP

安全性は「自分は気をつける」では足りません。
足場、手すり、作業床、飛散防止メッシュ、見守り役までそろって初めて事故確率を下げられます。
屋根では慎重さより先に設備が要ります。

単管足場も、部材を集めれば成立する話ではありません。
JIS準拠の鋼管寸法やクランプの接合だけでなく、壁つなぎや基礎処理まで含めて足場です。
組立そのものが専門性を要するので、DIYで塗装を考える人ほど、足場だけは業者施工に寄せたほうが安全と時間の両面で筋が通ります。

{{product:1}}

一部DIYという選択肢

DIYか業者かの二択で考えると、判断を誤りやすくなります。
現実には、一部だけDIYにする分担がもっとも収まりやすい場面があります。
たとえば足場だけ業者に依頼し、その上で塗装面の一部を自分で進める方法です。
あるいは高圧洗浄と下地処理だけ専門家に任せ、下塗り以降の塗装をDIYに寄せる。
逆に、洗浄や補修は任せて、上塗りの色替えだけ参加する形もあります。

この分け方が効くのは、危険工程と仕上がりを左右する工程がはっきりしているからです。
屋根塗装は、見た目の満足感が出るのは塗りの工程ですが、失敗が決定するのは足場、洗浄、下地処理、乾燥管理に集中します。
プロならここを先に固めますし、DIYならそこだけでも専門依頼に振る価値があります。
筆者も、全部を自分で抱え込むより、「落ちたら終わる工程」と「後戻りしにくい工程」を外に出したほうが結果が安定すると考えています。

一部DIYは、費用を削りながら事故リスクと仕上がりのブレを抑える中間案です。
特に平屋でも、洗浄後の乾燥待ち、補修材の硬化待ち、天候待ちが絡むと、工程管理は思っている以上に骨が折れます。
全部を自分でやる覚悟があるかより、どこまでを自分の役割にすると全体が破綻しないか、という見方のほうが実務的です。

まとめ|DIYでやるならここまで、迷うなら業者へ

DIY最終チェックリスト

DIYで進めてよいのは、平屋で4寸以下、足場が確保でき、劣化が軽く、雨漏りがなく、立会人がいて、天候の安定した日程を取れる場合までです。
筆者なら、ここを一つでも外した時点で自分では進めません。
屋根塗装は「塗れるか」ではなく「安全に止まれるか」で判断する仕事だからです。

事前確認は次の項目だけに絞ると判断がぶれません。

  • 屋根材は何か。スレートか、金属か、そもそも塗装前提ではない瓦か。
  • 劣化は軽微か。割れ、反り、錆、棟板金の浮き、雨漏りの有無
  • 勾配と階数はDIY範囲か。平屋か、4寸以下か。
  • 足場と立会人を確保できるか。
  • 天候と乾燥時間を守れる日程か。
  • 装備、時間、費用を揃えたうえで、使う塗料のメーカー仕様書を読んだか

迷ったら中止・相談の原則

やめるべき条件は明確です。
2階以上、急勾配、雨漏りや下地腐朽、著しい劣化、足場なし、単独作業、強風や低温、高湿の日です。
これは現場で何度も見てきた線引きで、無理に越えると、仕上がりより先に事故か再施工の問題が出ます。

TIP

迷いが出たら、その時点で中止で構いません。判断に迷う屋根は、作業者の経験より屋根側の条件が厳しいと考えたほうが外しません。

筆者の勧めは、迷ったら一度プロに点検だけ依頼することです。
見積と提案を並べると、塗装で済むのか、カバー工法か、葺き替えまで視野に入れるべきかが整理できます。
このひと手間を入れるだけで、見た目だけ整えて後から傷む失敗を避けやすくなります。

動き方は単純です。
まず屋根材を確認し、割れ・反り・錆・棟板金を点検し、勾配と足場の可否を見る。
そのうえでDIY可否を判定し、少しでも外れるなら業者診断へ進む。
条件を満たすなら、使う塗料のメーカー仕様書で乾燥時間と塗り重ね条件を確認してから着手してください。
無理に進めない判断も、屋根を守るための正しい作業です。

[編集者へ]

  • 本記事公開時に必ず内部リンクを2本以上追加してください(例:「素材別塗装ガイド(スレートの詳しい縁切り手順)」/「下地処理の詳しい方法」)。現時点でサイト内に該当記事がないため、本文中にプレースホルダを入れています。公開時は該当ページへのリンクに差し替えてください。

この記事をシェア

吉田 健太

元塗装職人・DIYアドバイザー。建築塗装の現場で10年の経験を持ち、プロの技術をDIY向けにわかりやすく伝えます。

関連記事

外壁・屋根

ベランダや屋上の「防水塗料」を選ぶときは、まず今ある防水層がFRPウレタンシートコンクリートのどれか、そして傷みが表面だけなのか防水層本体まで進んでいるのかを見極めることが先です。

外壁・屋根

レンガ塀やブロック塀を塗りたいとき、先に見るべきなのは色ではなく「その壁は本当に塗ってよい状態か」です。とくに日本で一般にブロック塀と呼ばれるコンクリートブロック塀は、安全確認を飛ばしてDIYに入ると危険で、

外壁・屋根

外壁塗装をDIYで進めるなら、まず見極めたいのは「自分でやっていい範囲」です。平屋で小面積で、劣化が軽い壁であれば現実的です。2階以上や広い面積、雨漏り、大きなひび割れがある場合は業者案件にして、安全面と仕上がりの確保を優先してください。

外壁・屋根

外壁塗装は、見た目を整える工事というより、雨水や紫外線から家を守るためのメンテナンスです。30坪前後なら費用は平均110万円ほどかかりますが、その中には足場だけで15万〜25万円、高圧洗浄や下地処理、3回塗りまで含まれます。